明確な目的やターゲットを設定して情報を届けるのがデザイン
デザインはアートと同種のように捉えられることもあるが、実際は似て非なるものだと感じている。「デザイン」を辞書で調べると「目的を持って具体的に立案・設計すること/goo辞典より」とある。デザインという世界を大枠で捉えた解釈だが、経験から感じる、特に印刷物のデザインは少し違う。
デザインとアートの違いや目的および実際のデザインで大切なことは何かを考える。
ターゲットに情報を的確に届けることがデザインの目的
デザインは、空間デザインやWebデザイン・チラシ・エディトリアル・パッケージなど様々な形状や種類がある。扱う情報の考え方や伝え方、技法はそれぞれ違うが、共通して言えるのは消費者に有益な情報を届けるという明確な目的がある。
よく、「デザイナーだから、絵がうまいの?」と聞かれる。しかし、デザインとアートは別物であり、デザイナーだから絵がうまいわけではない。時には、アートの要素を採り入れることもあるが、デザインとアートの根本的な目的は違う。
私見ではあるが、デザインは、集客や売上向上など、確固たる目的や伝えるべきターゲット層が存在し、的確に情報を届ける。一方、アートは自らの内面にある感情や美しい情景をキャンバスに反映させて表現するため、情報を届けるターゲットがあるわけではない。中には、依頼を受けて絵を描くこともあるだろうが、解釈や感じ方を見る者に委ね、反応がなくても大きな問題にはならない。その反面、デザインはターゲットにリーチせず十分な反響がなければ失敗であり、大問題になることもある。
デザインで消費者の心を動かし目標達成に近づける
上記の通り、デザインには明確に達成すべき目的や目標がある。そのため、情報を届けるターゲットを絞りながら、デザイン内容が常に依頼者の利益になる情報で、購買や消費行動につながるのかを考える必要がある。また、ターゲットを考える際、包括的な視点からマーケティングの数字などに頼ることが重要視される。しかし、人の感情や感覚まで反映されないため、消費者の立場でもあるデザイナーの考えや感じ方も取り入れた方が良い。
集めた情報を咀嚼して吐き出す作業こそデザインの醍醐味
デザインの作業で最も大切なことは、集めた様々な情報をまとめ直し、十分に咀嚼した上で最適化した情報を吐き出すことである。手にした情報をパソコンソフトを使い、適当に美しく見せる作業がデザインではない。
実際の作業では、伝えるべき情報を把握せずパソコン上で五月雨的に進めると、構成全体に一貫性がなくなり、言いたいことが伝わらない内容になる。作業の際は、必ず初期段階でしっかりと情報収集をし、十分に咀嚼をして、適切に吐き出す作業をしなければならない。吐き出された情報により、自ずと最適な表現が見えてくるため、そこで初めてパソコン上で体裁を整えることになる。
デザインは目的主義で常に結果が求められる
デザイン要素の一部としてアートを取り入れることもあると述べた。しかし、美しく見せることはデザインの手段であり、消費者にとって利益につながる内容にすることがデザインの目的であるため、その手段としてアートを取り入れる場合がある。
デザインは、デザイナーの欲望を満たす場でも、テクニックを披露する場でもない。消費者の心を動かして消費行動を起こさせ、その結果として依頼者の目的達成につなげる必要がある。結果につながるデザインでなければ、すべて失敗であり、そこがアートとは違う部分でもあると感じている。