良いデザインには良い参考資料が必要
どんなに素晴らしい研究結果も、参考になる前例がなければ良い結果は生まれない。
世の中にある評価が高い多くのデザインは、過去から連綿と受け継がれてきた技術や考え方から成り立っている。良いデザインを生み出すには、参考となる様々な資料との出会いが必要である。資料集めは、デザイナーにとって非常に重要な時間である。
無からは何も生まれない
「何もないところからデザインを作るって凄いね!」デザイナーをしていると稀に言われる言葉だ。しかし、デザインには前提となる最低限の情報や目的が必要で、真っ白な何もない状態からは何も生まれない。つまり、情報や目的がなければデザインなど作れない。ノーベル賞を受賞した研究者たちも、過去の功労者が残した膨大な研究内容を検証することで新たな発見につなげている。モノづくりには、様々なベースとなる既存の資料や情報などは不可欠である。
デザインに必要な発想力やアイデアを生むためには、チラシやパンフレットなどの印刷物だけではなく、書店に並ぶデザイン作品集やWebサイト、街の風景なども十分参考になる。
テーマを持って手当たり次第に資料を収集する
参考資料を集める場合、分野やジャンルにこだわらず気になる印刷物を反射的に手に取る。それは、消費者の注意をひいて目に留めることがデザインの役割であり、いち消費者である自分が気になったのなら少しは魅力があると考えるからである。
デザイン全体の魅力以外に、例えばフォントや写真の配置などテーマを決めて集めることで、集める参考資料の幅を広げることにつながる。そして、より重要なこととして、集めた資料を定期的に見返して断捨離してみることである。資料を手にした当時に良かったデザインも、時間の経過や自分の成長により大きく印象が変わることを感じられる。
デザイン力は資料力であると確信している
デザインを作る技術の向上には、パソコンソフトの操作の上達は必須である。しかし、デザインの元になる「発想力」や「アイデア力」を磨くためには、より多くの資料を集めて何度も見返し、参考になるデザインを引き出しにストックすることが大切である。時には、芸術的な要素を採り入れるために、展覧会や美術館などへ訪れることも発想やイメージの勉強になる。
デザイナーの中でも、多くの参考資料を集めて様々なデザインと出会う機会が多い人ほど、アイデアやデザインの幅が広いと感じている。モノづくりは、良い前例の組み合わせが新たな前例を生み出して受け継がれていくのである。